泡盛部_40:決まらない。でも決めたい

02 08, 2010
神の水で仕込むと、煩悩が多い人間を惑わす! ようです……

寒波来襲のせいかどうかはわかりませんが、今週もゆっくりとした集まりでスタートした部会は、泡盛経験の少ないうら若き女性部員が3名参加し、八重山諸島の石垣島から八重泉酒造。

元々は明治末期にお菓子屋として創業し、前勢岳を背にして眼前には深みのある青き海原の広がりを見下ろす風光明媚な丘で、1955年に泡盛の酒造所を操業開始。於茂登(おもと)岳の中腹には水神様の霊地と語り継がれる「ナンガーラ」(ちなみに“アンガーラ"はありがとうの意味らしい。で、アンガールは…)と呼ばれる湧き水があります。そこを源流とした水を仕込みにして「滴滴在心」(一滴一滴に心を込めるの意)をモットーに、コンピューターによる最新の品質管理も導入しつつ昔ながらの手作りの良さも守り続けている蔵。その名もそして味わいも“黒真珠"と表現される古酒や、フランス直輸入の樫樽で熟成させブランデーの芳醇さを持った古酒。そして、生きたまま泡盛に漬けたハブ酒などの商品もあります。

◎試飲泡盛:八重泉(30度) 600ml
 酒造所:八重泉酒造/所在地:石垣島

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落ち着いた黄色地に古典的な髭文字を使用した商品名と、のし紙の重ねのようなV字とお目出度い松竹梅のイラストが配された何とも気品のあるラベルデザイン。キャップにある「STOP ! 飲んだら飲むな」のマークはこちらの社長のオリジナル。確かにここにあれば絶対に見るかも知れません。
と、ひとしきりボトルを眺めていざ試飲開始。
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【ストレート】 甘く豊かな香り。ほどよい辛味がスッキリとしていて後味にしつこさがない。

【ロック】 そつなくまとまり、全てにバランス良く口の中に広がる味。

【水割り】 麦の味わいが増し、苦味が強くなり堅い印象の味に。

【お湯割り】 味に落ち着きが無くなり、苦味が気になる。

飲むスタイルによって味わいにバラツキが出て、この泡盛が持っている本質が最後まで解らず仕舞い。個人的には、夜をゆっくり長く楽しめそうな「ロック」が良かった。そのバランスの良さが幸いしたのか、どんなテイストのかりんとうとも問題がなかったようです。

部会の前日は節分。そうです! 一年が終わり新しい“節"が始まりました。二週間前の部会でテーマとなり私も持参し集まった「福豆」が、升本屋マジックで熟成を経て“納豆"として登場するなどしても、個人的にはこの泡盛に合わせるならば、美味しい塩で焼き鳥が食べたい。旨い塩、そうミネラルたっぷりなちょっとしっとりとしたきめの細かい沖縄の塩が引き出した肉汁の旨み。いつもながら、泡盛は素材の力が活かせる調理法がお似合いかも。

今までだったら、部員が好き勝手に言うリクエストから可能性を含めて選んでターンテーブルに乗せた音から、「あっ、これ!」って決まります。八重山諸島石垣島に渡って二蔵目。なぜか前回同様に合わせたい音楽が見えてこない。私の頭に浮かんだのは、Chicagoと中森明菜というバラバラなイメージ。とうとう最後まで音が見えないまま、S部員の紹介で来た女性達も緊張がほぐれるのにちょっと時間がかかり(多分)、そのうち空き瓶が増え続けて無くなってしまい、甕泡盛に手を出した部会も、あっという間に深夜。味、おつまみ、音楽、全てに落ち所が見えなかったのは、神の水のせいなのか……。それとも、私に何か煩悩があって濁っていたのか…。

個人的なお願いですが、マイスターのN部員さん、八重泉の直火蒸留100%を試飲させてくださいね。その味にこの泡盛の本質があるような気がします。


今週も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

◎テイスティング・フード・ミュージックなど詳しい情報は、
 多分、水曜日にアップする泡盛部公式ブログ→ここをクリック


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まるでホルモン

02 08, 2010
その幅3センチ、長さ50センチ!

代官山で写真展を観た後、様々なイタリア食材を扱っているEATALYへ行き、
何か面白そうなものはないかと物色。

「このままじゃ鍋に入らないよね」と、乾燥パスタを眺めていたら、

「適当な長さにポキッと折ってください。海の塩分と同じくらいの熱湯で茹で、
 なるべく上質なEXバージンオイルとおろしたてのパルミジャーノチーズをかけて、
 召し上がってください。」と、店員の方。

早速、試しました。

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まるでホルモンのようなヒダヒダの部分にオイルとチーズが絡まり、
もちもちプリプリした食感で食べ応え有り。
ちょっと失敗したのは四等分したその長さ。
フォークに絡まる訳でもないので、ガシッと刺して噛みちぎる食べ方になってしまうのは
ちょっといただけない。次回からは、八等分くらいにしてみます。

イタリアではお腹の調子が悪いときや風邪を引いたら
こんな風に茹でたパスタにオリーブオイルとチーズだけをかけて食べるそう。
日本で言えばお粥みたいなものですね。
この話、映画「グランブルー」での一コマ。


美しく、愛に溢れた文章

02 04, 2010
数年前に放送された、ミラノにあった書店とそこで青春、結婚、離別を経験したある作家のドキュメンタリー番組が、今年も再放送されました。観終わった後、気になって頭の片隅にずっと大切に仕舞っておいたこの人が書いた断片、その文字に初めて触れたのは昨年秋に読んだ福岡伸一氏の著書の中。風景、それも遠くではなく面前にある風景の描写が美しく、一緒にそれを観て同じように感じているデジャブ感。

作家 須賀敦子がその人。
文庫本で全集が出ているというので買いに走り、昨秋から何度も読み返しています。

その中の一篇。成田空港に向かうリムジンバスの中の一コマ。手話で会話する若い母親、双子の少年、そして彼らの姉。



バスが高速道路を走りはじめてからも、四人の家族は、まるで目には見えない機(はた)を織るように、素早く手先をうごかし、あかるい陽のひかりをとおすレースのようにゆびをからみあわせては、たのしげに会話を続けていた。生まれてはじめて手話を見る気持で、私はみごとな四人の会話を(自分ではなにひとつ解読できないまま)目で追った。
彼らの手の動きが、なみはずれてうつくしいことに気づいたのは、かなりの時間がたってからだったように思う。母の手の動きはちいさくて、やさしく、娘の手はひらひらと蝶のように舞う。少年たちのは、元気がよくて、大きく左右に振れる。どこの家庭にもあるように、きっと彼らだけに通用することばや感情も、いくつか、この手の動きで表現されているにちがいない。

旅のあいまに 「ある日、会って……」抜粋




須賀さんは偶然乗り合わせたバスの中で空港に着くまで、この家族について色々な考察を繰り返します。なぜ少年達は耳が聞こえないのだろう…。母親はこれまでどんな人生を歩んできたのだろう…。その、柔らかく、そして愛に溢れ感性豊かに紡ぎ出された文章を読んでいると、作者の心の内側に自分がいるような錯覚に陥りました。

河出文庫「須賀敦子全集 全8巻」
私は好きなのは、ミラノ霧の風景・トリエステの坂道・地図のない道。



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幸せオーラ

02 04, 2010
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一瞬、自分の目を疑いました。

特別な集会があるんでしょうか、たくさんのカラフルな乗り物。
なんだか、殺風景な住宅地がディズニーランドになったような感じ。

練馬の住宅地を散歩していてこんな風景に出会いました。本来ならば二輪車を駐輪するためのスペース。どんな風に使うかは、そこに住んでいる住民が決めればいいことだけど、ここには小さな子供がいっぱい住んでいるんでしょうね。なんだか、幸せなオーラを発していました。

でも、大人の乗り物は何処にあるんですかね。



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泡盛部_39:ユルリ、ユルリ

02 01, 2010
いよいよ部活動も最後のエリア、八重山諸島の石垣島。東京から約2000キロ、日本一早い海開きが行われるこの島の西側、日本百景に選ばれた川平湾の目と鼻の先にある高嶺酒造所が、今回の蔵。

この島は沖縄で最も水質が良いといわれ、その中でもこの蔵が仕込みに使用する沖縄最高峰 於茂登(おもと)連山の天然水はその最たるもの。この蔵は今もほとんどを手作業で行い、さらに最近では少なくなった昔ながらの「直火式地釜蒸留」。この蒸留法は、洗米から約2週間かけて熟成したもろみを釜に入れて直火炊きし、70度に達するまで蓋をしません。それによって、二日酔いの原因となる悪い成分を飛ばし、さらには焼いたことによって香ばしい香りが出るそうです。

終戦後しばらくの間、原料のタイ米が不足し、沖縄各地でチョコレートなどを材料に粗悪な泡盛を造っていた時期がありました。しかし、ここの一代目は泡盛を「米酒(べいしゅ)」と命名しそれを看板に掲げ、自信を持って販売しました。

その後、蔵を継いだ二代目は先のことを考え息子兄弟に手伝わせます。それまでの仕込みは全て二代目の兄である叔父の勘だより。その叔父が高齢であること、そして「味にバラツキがある」という客の一言から、兄弟はデータを取ることを叔父に相談するも「身体で覚えろ」の一点張り。彼らは叔父と何度もぶつかりながら、気が遠くなるようなマニュアル作りに励みます。そして数年後には酒質が向上し、叔父は彼らを認めました。さらに彼らは古酒を目指して2002年から貯蔵を開始。2008年、「おもとゴールド6年古酒」を泡盛品評会に初出品し、見事、最高賞授与の栄冠を得ました。2009年には創業60周年を迎え、それを期に三代目が蔵を継ぎました。

100128_於茂登
◎試飲泡盛:於茂登(おもと)30度 600ml
 682円(税込)
ラベルには「手作り泡盛伝承蔵」とあり、そのこだわりの蒸留法も明記。青く抜ける空に稲穂が頭を垂れ、中央に甕を配した泡盛らしいデザイン。

【ストレート】
 濃密な味と香りに溢れ、まとまりがある。

【ロック】
 冷えても本質は大きく変化せず、
 しばらくすると甘味が増す。

【水割り】
 甘味が増して、味がどんどん伸びる。

【お湯割り】
 香りが立ち、甘味が増して味が伸びる。

飲んだ印象を総括すると、スッキリとしてバランスが良く、シンプルながらもしっかりとした個性。これが3年以上の熟成を経て古酒となり、多くの泡盛ファンの心を掴んで逃がさない理由なのかも知れません。試飲した中でも私の好評価は氷無し5:5の水割り、もしくはお湯割り。割っても本質が変化せずに伸びていく味わいは、この泡盛の特性だと感じました。

甘いかりんとうだと辛味が際立ちましたが、味が強いものと相性が良いようです。昨年、WOWOW「銘酒誕生物語」でこちらが紹介され、その中で三代目社長とその弟のお奨めはラフテー。偶然にもこの日は、塩から、鯉コクなど濃いめの味付けや個性の強いものが多かったのですが、どれとでも問題なし。私は酸味を合わせたくみたくなり、白菜を蒸した熱々をポン酢+ラー油で一緒にいただきたいですね。

この日の部会はユルリ、ユルリとスタート。いつものように音楽をチョイスするタイミングになって困った。今回はなぜか浮かんでこない。そんな定まらない状況と部員のリクエストから升本屋店主がチョイスしたのは、ビリー・ジョエル。AORサウンドのような洗練された音が良かったのでしょうか、そのまま、何となく落ち着いた雰囲気で部会は終了。これも、この於茂登によって生み出された空気感なのかもしれませんね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

◎テイスティング・フード・ミュージックなど詳しい情報は、泡盛部公式ブログ→ここをクリック



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こんな場所に、居たい。

01 31, 2010
墓参りに明大前へ。このお寺には樋口一葉を始め有名人のお墓があり、家人の祖父母の墓の手前には笠置シヅ子のお墓も。お墓の掃除をしたら今日のこの天気と相まって、大変に気持ちが良い。「良く来たね、ありがとう」。そんな声が聞こえたような。

こちらへ墓参すると、立ち寄りたくなるカフェ&バーがあります。

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その店は地下にあり、十畳ほどの狭い店内は二階分くらいの天井高。地上一階部分にある明かり取りから光が差し込み、その壁面の一部が床から十数段、天井に向かって日本文学の名作ばかりを発売当時の単行本で埋め尽くされています。その横に設えられた4人掛けのテーブルに座り、サイフォンの珈琲を飲みながら読んだことのある本を探しているだけで何だか楽しくなります。そして、狭い店内ながらその天井高が開放感を与えてくれます。「普通」の珈琲と紅茶とお酒。そして「普通」のおつまみ。ここで本を眺めながらカウンターに置かれたおでん鍋を前に夜更けに一杯やってみたい。そんな妄想が働くお店です。あー、いつか試す。いや、もう時間がないんだ。試さなくては!

店の名前は、Book cafe塊多(かいた)。
1919年に22才で夭折した村上塊多のデッサン(多分)が迎えてくれます。


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するりするり

01 26, 2010
ウイスキーをストレートで飲む時の楽しみの一つが、グラス選び。
昨秋から、ガラス製ではなく“陶磁器"で手頃な値段のものを探しています。

この酒器を、日々(にちにち)で開かれている「吉田直嗣作品展」で購入。

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ウイスキーを注いでそっと持ち上げると、ちょうど良い塩梅の重さ。さらに琥珀が映える白い釉薬。そして、この特徴的な縁の反り返りが素晴らしい結果を生みました。

下唇へ乗せて酒器の底を少しずつ上に上げていきウイスキーを口の中に流し始めると、エッジに向かって徐々に薄くなりながらゆるやかに外側へ反り返るその縁が、びたっと上唇に収まりました。この薄さと形状の感覚がとても気持ちよい。

吉田さんの作品は、これとは別に購入した皿、珈琲碗もそうだったのですが、精度の高いロクロ技術から生まれた美しいフォルムだけではない、その「使い心地良さ」が特徴に思えます。


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写心集がアップしました

01 25, 2010

暖かく穏やかな日です。

こんな日が待ち遠しい。

ここをクリック


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ソフティー&エッジィー

01 24, 2010
日常の生活に美意識を持つことを意識させてくれる「日々(にちにち)」の2010年の器始めは、吉田直嗣(よしだなおつぐ)作品展。昨年秋、あるギャラリーで開かれていた茶器の作家展で拝見し、数人の作家の中から一番気になっていた人。

大学卒業後、装飾を一切排除した超絶モダーンな純白の磁器で世界中の注目を浴びている黒田泰蔵氏に師事。現在は、鹿の親子や猪も現れるという富士山麓で作陶に励んでいるそうです。風貌からは土をこねている人と言うより、音楽が聞こえてきそうなイメージを持ちました。

作品を最初に観た時、そのフォムルの何気なさからマスプロダクト的な印象を受けましたが、ジッと眺めエッジや肌触りの感触を確かめていると、それがゆるやかにゆっくりと有機的な印象に変化。そして、ロクロ技術の精度の高さから生み出されるフォルムにはキレがありとても軽い。

今までは「黒」の作品が多かったそうですが、今回は「白」。黒は漆黒の闇に鉄分が仄かに光る星となり、白は女性の柔肌のように滑らか。それがコンテンポラリーなフォルムと、エッジをなでる指にほんの少し緊張感を与えてくれる薄さで器を持つ人に語りかけてきます。

1月27日まで、「日々」で開催中! 詳しくはこちらをクリック

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吉田さんの器は、和食にも洋食にも合いそうです。そこで、大皿を買うときに浮かんでいた料理を作り、盛り付けてみました。


自家製ポモドーロソース フリッジ
サニーレタスとリンゴのサラダ(レモンとEXオイルかけ)
ライ麦パン




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イタリアの断片_サービスという言葉に弱い

01 24, 2010
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1993年の年末にイタリア南部を巡る2週間の団体ツアーに一人で参加。その6日目早朝、ナポリから空路、シチリア島へ渡り、パレルモ市内を観光。そして、近くの小さな漁村のホテル、MONDELLO PALACE HOTELに宿を取る。明日は、このホテルで初めての海外年越しを迎える。

イタリアの田舎町を散策したくなり、気心がしれてきた共に旅する人たちと繰り出す。季節外れの避暑地は人影もまばら。黄金に輝く太陽が蒼天から群青色の地中海に沈み、街は薄暮に染まっている。港には小舟が桟橋に係留され、ゆらりゆらりと穏やかなリズムで揺れている。

港や町中を散策後、ホテルのフロントに教えてもらったTrattoria "SAPORI DI MARE" da Giovanniへ向かう。訳せば“ジョバンニの海味"という、何ともストレートな店名。その名が示す通り、入り口の冷ケースにはその日に捕れた魚介類が山のように積まれている。そして、街の風景がポップな色調で壁に描かれた店内は4人掛けのテーブルが数席と狭く、時間が早かったのか客はいない。

店主ジョバンニに微妙な英語と伊語でお奨めをたずねると、入り口を差し、どれも新鮮だから間違いないと自信ありげ。そこで、牡蠣を注文。今ならば世界中から様々な牡蠣が集まってくるけど、17年前はあまり見かけなかった。日本のものより一回り小さいそれに、シチリア特産のレモンをギュッと搾り一気に口に放り込めば、海の香りとミルキーで濃厚な味わいが口いっぱいに広がった。美味い、そして新鮮だ。当たり前だが、獲れたてに勝るものはない。さらに、日本から来たことに喜んだ店主は、イカのフリットをサービスするから食べろと言う。「サービス」という言葉に誘われ注文し、大盛りのフリットに同じくレモンを搾って平らげた。

帰りしな、デザートを食べていないことを思い出しイタリアンジェラートのスタンドへ。イタリアを舞台にした本を読んでいると、食後、こんな風に散歩する場面が時々書かれている。ほのかにレモンの香りのするそれは、ほどよい甘さ。旅先でこんな夜を過ごせた時ほど、至福を感じる。そして街の中心にある広場には、イタリアの年末の風物詩でもあるカラフルな移動式メリーゴーランドが、元旦の朝にスイッチを入れられるのを待っていた。

なぜ店の名前を覚えているかと言えば、その時の伝票を保管してあるから。最近、その伝票を見たら、「Frutti di mare(海の幸のフリット)10,000リラ(約700円)」と書いてある。店主がサービスすると言ったからタダと思っていたけど、どうやらそうではなかったようだ。旅先でもらう伝票を取っておくと新たな発見をし、その瞬間がリアルに浮かぶ。ちなみにこの日の伝票を見ると、生牡蠣、先のフリット、パスタ、メインの魚料理に白ワインで178,000リラ(約12,400円)。6人で割って一人2,000円程度。本当に安い!

※このコラムは、旅先で観たもの食べた物、感じたことを断片的に書きます。


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Author:あんなかまこと
福島県会津若松生まれ。万博の年に東京へ転居。四谷界隈で仕事をし、荒木町で飲んで食べて20年。販売促進広告制作を主な業務に広告代理店を営む。

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